※現代高校生。「NERVOUS VENUS」パロ?。とにかく早稲田先生尊敬。
ひたすらに楸瑛が馬鹿です。ギャグ。
絳攸一人称。バイオレンス度5割増し。
ゴミ捨ては日直の仕事だ。仕様がない。でなければ、こんな男と二人で一緒に歩いたりなどしない。
この高校に入って、初めて自分の姓を呪った。まさか席が隣り合うなんて!
隣を歩く藍楸瑛は至極楽しそうに、ごみ箱を手に提げて歩いている。俺は、グラウンドの隅にある集積所へ行くまでの途を、地面を睨みながら歩いていた。
不意に声がした。
「危ない!」
突然視界が陰って、ど、と派手ではないが、鈍い音がした。
気づくと目の前に大きな手があって、安心したように笑う顔があって、自分は庇われたのだと知る。
「大丈夫かい?絳攸」
足下に弾む野球ボール。しかし視線は外せない。
――近い。
「――っ!」
「吃驚したよね。でももうだ――」
「だい、丈夫じゃないのは、お前の方だろ!!」
そして俺は、謝りに来た連中(休み時間にキャッチボールをして遊んでいたらしい)を一瞥しただけで、その骨ばった楸瑛の手首――その手の甲は赤く腫れだしている――を握りしめ、保険室へと歩き出した。
「……。」
「見て見て見て!この手首の痕、絳攸ったらスゴイ力で私を保健室まで連れて行ってくれて。愛の力を感じない!?」
自習中の教室。楸瑛が隣の席でクラスメートにわざわざ制服の袖をめくって見せびらかしている。そこには、痣になってしまった俺の指の跡。
「もうぐんぐん引っ張られて、アン、絳攸ってば漢らしい!みたいな」
一方周りは「良かったネ!」「報われたネ!」などと好きなことをほざいている。
楸瑛はクラスの人気者だ。顔良し、頭良し、スポーツも万能で冗談もよく言う。男女問わず、いつも奴の周りには人がいた。
女にもよくもてたはずだが、何故か俺に絡んでくる不思議。
「でもキズモノにされちゃったからには、責任持ってお嫁に行かせていただくよ!」
「…………。」
眩しいくらいの笑顔で言っているのが予想されたが、ここは無視だ。絶対無視。今は自習中!
「でも楸瑛君がお嫁に行くんだ?」
一人の女子が面白がって口を出す。そんな彼女に楸瑛は堂々と言い放った。
「大丈夫!絳攸の子は私が産んでみせるから」
あはははは、と教室中に笑いが弾ける。
まじでうざいと思ったが、顔に出ないよう務めようとした。
我慢、だ絳攸。この、鉄壁の理性で――
「だから絳攸、私のコト好きにしていいヨ」
――無理だ。
「じゃあエンリョなく!!」
頭を抱えられ、耳元で囁かれた瞬間、その憎たらしいほど整った顎に拳を見舞う。我ながら鮮やかなクリーンヒット。
「いっだーーー!!」
「あはははは!」
「かわいそー!」
痛みに悶絶する楸瑛に、周囲は爆笑だ。何気に酷いクラスだ。
「大丈夫か楸瑛、何だかボロボロだぞ」
劉輝が楸瑛に駆け寄っている。いいやつだと思う。だが楸瑛の奴は――
「委員長知ってますか。恋人に痕をつけるのは独占欲の表れなんですよ。これも絳攸の愛情表現と思えばむしろカイカ…」
俺は再び拳を握り締める。
「ドMだ、ドMがいるぞー!」
周りは大盛り上がりだ。しかし劉輝は唖然としている。それが普通の反応だ委員長、俺の心の良心。
「楸瑛・・・!そこまで」
「ふふふ、いいんですよ委員長。私はこれで幸せなんです」
「恋の奴隷炸裂だな……」
「気持ち悪いわ!!」
俺はもう一発をお見舞いしようと手を振り上げた。しかし、その瞬間腕を楸瑛にとられる。
さっきまでうずくまっていたヤツが自然と俺を見上げる形になって――
「でも、私は出会った時から君に囚われているから、もうこれ以上は、ムリ」
――俺の手の甲に、口づけた。
そして、俺は――
ほぼ条件反射で、楸瑛の股間を蹴り上げた。
「~~~~~ッッ!!!」
今度こそ楸瑛が床に崩れ落ちる。辺りには「ひいいいいっ」という男子の悲鳴と、「おおー」という女子の嘆声が上がった。
俺は無言で立ち上がり、騒然となった教室を後にする。劉輝が何か言ってきたが、聴こえない振りをした。
奴の唇が触れた瞬間、背中が泡立ったなんて、まさか。
ただ気色が悪かっただけだと、そう、自分に言い聞かせる。
頭の中がざわめく。それは潮騒に似て。
やつは波だ。あおいあおい波。
寄せてくるたび、足元の砂が攫われてゆくようで。
逃げなければ、呑まれてしまいそうになる。
囚われているのは――
全国の楸瑛ファンに謝ります。本人めっちゃ本気でアタックしてるのに、周りに本気にされない楸瑛を書いてみたかったのです。ああ楽しい。