激短

 
「……その跡、何?」

 無意識だったのだろうか。左手で触れていた自らの右手を見やって、今そうして諸手を重ねていたことに気づいたように絳攸は眉を上げた。
 そうして離れた左手の下に現れたのは朱の、三重線。

「ああ、これか」

「猫にでも引っ掻かれたの」

「ああ・・・。傍によっても逃げなかったから、思わず手を伸ばしたら」

「ちゃんと消毒した?」

「いや、血は出なかったから。そんなに痛くもなかった。軽くだ、軽く」

「がっかりした?」

「・・・・・・ちょっとな」

 そうして、その時を思い出しているのだろう絳攸の表情は、普段の彼に比べたら、砂糖の匂いがしてきそうなほど甘やかで。

「・・・・・・美人だったんだ・・・・・・」

 いいよな、猫。

 そんな表情で微笑まれたら。

「私なら噛みついてるね」

「は?」

「いや、何でもない。こっちの話」

 

四本足の彼女に嫉妬


4.……その跡、何?
ねこずきこうゆう。

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