リュウキはそっと、シュウレイの頬に触れた。
「私がここまで来れたのは、シュウレイ、そなたのおかげだ」
シュウレイも彼を見上げる。
「リュウキ・・・・・・?」
「愛している。シュウレイ」
じっと見つめ合い、そしてリュウキはそのまま、シュウレイの唇におのれのそれを重ねようと彼女の腰を引き寄せる。
シュウレイは焦った。顔が、近い。
「ちょ、待って劉――
「こんの、色ボケ王子がーーー!!」
ずばん!
まさに劉輝と秀麗の唇が触れ合うかという瞬間、何かが劉輝の頭に飛来し、強かに打ちつけた。
「いだっ!!」
痛みにうずくまる劉輝。秀麗は呆気にとられて飛んできた方向を見遣ると、そこには李絳攸が憤怒の形相で仁王立ちしていた。
「セリフもまともに覚えられないくせに余計なシーンを増やしてるんじゃない!!」
「おおお約束ではないか」
「全校生徒が観るんだぞ、キスシーンなんかいれられるか!」
絳攸は握り締めた台本で再び劉輝の頭をはたく。ズボンから覗く片足が裸足なのは。どうやら先程投げたものは上履きらしい。
「うっ、 ひどい、次期会長なのに・・・・・・」
「ははは、私たち、爽やかな感動を胸に卒業したいのでよろしくお願いしますね」
舞台袖で絳攸と控えていた藍楸瑛が穏やかに釘をさす。パイプ椅子に長い足を組みながら腰掛ける姿はまるで一廉の俳優のようだ――格好は上下ともに学校指定のジャージだが。
「まーまー、焦るな若者!」
傍にいた浪燕青も笑って諭すだけだ。
「上履きを投げたことに対する言及はないのか・・・?」
劉輝が愕然とすると、もう一人、その場にいた静蘭はため息を吐いた。
(早くバイトに行きたい……)
すでに帰りたいモードである。
我に返った秀麗は腰に手をやり、劉輝を睨んだ。
「もう!ふざけてるなら帰るわよ」
「ふ、ふあけてなんか!私の純粋な気持ちなのに!!」
今度こそ劉輝が驚愕すると、いろんな意味でのあまりの仕打ちに、なんだか後輩が不憫に思えて来て、思わず楸瑛と燕青は温い笑みをこぼした。
彼らは彩雲高校生徒会執行部。
卒業式での打ち上げで各部が行う出し物――執行部は演劇をすることになった(劉輝の強い希望で!)――の練習のために放課後の体育館に集った、そんな午後の一幕である。