あるところにひとりのわかものがいました。
わかものはうつくしく、たくさんのおんなたちにあいされました。
けんのうではならぶものなし、
くにのしけんでは いちばんになれるくらいにかしこいおとこです。
うたをうたえば みんながうっとりとします。
おかねもたくさんもっていて、けらいもたくさんいます。
まいにち なかのよいかぞくといっしょにくらしていました。
しかし あるときわかものはおもいます。
「このよに おかねよりも、かぞくよりも、だいじなものはあるのだろうか!」
そしてわかものは それをさがすたびにでました。
わかものは みちのとちゅうでひとりのまいごに であいました。
わかものはたずねました。
「きみの いちばんだいじなものはなんだい?」
まいごはいいました。
「おまえにおしえる りゆうはない」
おしえてくれないなんて とてもこうかなものなのかと わかものはおもいました。
なので ためしにいってみました。
「たくさんおかねをおげるから それをわたしにくれないか?」
そういうと まいごはひめいをあげました。
「そうしたら おれはどうやって いきていけばいいか わからなくなる!」
わかものは わるいことをいったきがして あやまりました。
そして、まいごをまちまでつれていってあげてから わかれました。
わかものは こんどはまちで ひとりのしょうねんに であいました。
しょうねんにたずねました。
「きみの いちばんだいじなものって なあに?」
しょうねんは わらっていいました。
「いのちです」
わかものはうなずきました。いのちはたしかに だいじなものだとおもいました。
しかし わかものはいいました。
「だけど それでは わたしはなっとくできないんだ」
そして しょうねんとわかれました。
まちのなかをあるいていると、ひとりのわかいおとこが こかげでみずをのんでいました。
きれいなかおをして、ごうかなふくをきていました。
じぶんのような おかねもちにみえたので、わかものはこのひとなら わかるかもしれないとおもいました。
わかものは こえをかけてみました。
「あなたの だいじなものは なんですか?」
おとこはいいました。
「ないよ」
わかものは びっくりしました。
「いのちは どうですか?」
おとこは わらいました。
「いのちは しゅだんなんだよ。なにかがしたいから いのちがひつようなんであって、なにもしたくなければ いのちなんかにいみは ないんだ」
わかものは また ききました。
「では あなたは なぜいきているのですか」
おとこは いいました。
「しぬ りゆうもないからだよ。だからこうして いきるりゆうをまってる。わたしはいま いきてもいないし、しんでもいない。 ただ、まってるんだよ」
それきり、おとこはなにもいわなくなってしまいました。
そして わかものは そこからまたあるきだしました。
わかものが あるいていると こんどは えらそうなおとこにあいました。
わかものはききました。
「いちばん だいじなものは なんですか?」
えらそうなおとこは いいました。
「なぜ おまえのような はなたれにおしえなければ ならんのだ」
わかものは はなたれではありませんが、
きいてみました。
「それはどれくらい たいせつなのですか?」
おとこは にんまりとわらって いいました。
「せかいじゅう すべてのにんげんをひとみごくうにして まものにたべさせても まもりたいひとだ」
わかものは それはすごいひとだと おもいましたが、なんだか おそろしいこころもちがしたので、 おとこにわかれをいいました。
わかものがどんどんあるいてゆくと、とうとう おしろについてしまいました。
おうさまなら、きっとすばらしいものを もっているにちがいありません。
わかものは おうさまに たずねました。
「おうさまのだいじなものは なんですか?」
おうさまはいいました。
「ここにはないのだ」
それがとてもかなしそうなようすなので、わかものはいいました。
「ならば わたしがとってきてさしあげましょう」
だってわかものは つよくて あしもはやく、かしこいのです。いけないところはありません。
しかしおうさまは くびをふりました。
「それはできない。それは よのもちものではないのだから」
わかものは ふしぎにおもいました。
おうさまはせかいでいちばん えらいひとです。
おおきなおしろにすんでいて、たからものを たくさんもっています。
へいたいだって たくさんいるのです。
できないことなど なさそうなのに。
ですが おうさまは かなしそうにほほえみました。
「はなはうつくしいが、つみとれば かれてしまう。よは あおぞらのしたでさくはながすきだ。だから そのままにしておく」
わかものはききました。
「おうさまは はながだいじなのですか?」
おうさまは ほんのすこしだけ しあわせそうになっていいました。
「はなの ようなひとだ」
おしろからのかえりみち、わかものは おもいました。
「みんなには ちのつながったかぞくよりもたいせつなものが あるのに、わたしにはない!」
わかものはかなしくなって、みにつけていたさいふや けんをぜんぶ なげすてました。
そして、すわりこんで おおごえでなきました。
なみだがたくさんながれました。うつくしかった わかもののかおは ぐしゃぐしゃです。
こえもかれて、しゃがれごえしかでません。
そんなわかもののまわりを ひとびとは みぬふりをして とおりすぎていきます。
「わかものよ、なにがそうかなしいのじゃ」
いつのまにか ひはくれていました。
きがつくと、そばに このよのものとはおもえないほどに うつくしいてんにょが いました。
わかものはすべてを はなしました。
すると てんにょはいいました。
「そなた そのままそこにいるがよいぞ。このみちのむこうから ひとりがあるいてきて、そなたにこえをかけるじゃろう。 そのものが そなたのうんめいのきみじゃ」
わかものは めをまたたかせました。
それをみた てんにょは わらいました。
「そう、そのまぬけなかおじゃ。そのままでおれ」
そして てんにょは きえてしまいました。
さて、そのつぎのひ、ほんとうに わかものにこえをかける ひとがあらわれました。
そのひとは ぼろぼろになったわかものをみて わらいました。
でも てをさしのべてくれました。
うれしくなって わかものは まよわずにそのてをとりました。
そして、そのひとを いっしょうかけてだいじにしようと おもいました。
おわり